2018世界大会レポート(松原)

2018第5回 世界空道選手権大会

(社)全日本空道連盟 広報委員長  松原 隆一郎

2018年12月1、2日の世界大会は、名古屋で開催された。会場は「市役所」で降りて名古屋城の掘の中にある愛知県体育館・ドルフィンズアリーナ。というと分かりにくいが、大相撲の名古屋場所が開催される施設である。

体力別、6階級で行っているが第1回(5階級で実施)こそ複数階級を日本が取ったものの、第3回ですべての6階級をロシアが独占。前第4回に軽量級のみ中村知大が取り返したが、ロシアが圧倒的に強いのは間違いない。

日本選手は総本部の清水亮汰、山崎順也、岩崎大河を中心に、復帰した中村知大や吉祥寺支部で稽古している誠真会館の加藤和徳・智亮兄弟、東海大柔道部が七連覇した際の中軸で全日本柔道選手権にも2度参戦している野村幸汰が主軸。彼らがいかにロシアと戦うかというトーナメントだった。

しかしこのところアゼルバイジャン、ウクライナ、カザフスタン、ジョージア、モンゴルも着実に伸びており、大会によっては日本選手やロシア選手を破ることもある。しかしロシアではなんと言っても柔道をしのぐほど人気があり、テレビで全国放送されたり空道のインストラクターで生活できるとあって、勝利にかける意気込みが違う。何人かの有力選手はMMAでも活動している。

金曜日に名古屋入りする。だ。そこのフロアーで支部長会議を開いたが、ルール説明会や審判説明会は別途やっているし、今回私は審判はやらなくてよいので、あっという間に終わった。本日から3日間、母方の叔母宅に居候。叔父と3人でワイン2本を空け、帰宅して早々に寝てしまった。

12月1日は世界大会初日。9時半に玄関前にはすごいひとだかり。選手や関係者が開場を待っていた。

開会式では40カ国の選手250人が子どものプラカードを先頭にすし詰めに並ぶ。開会式では大村秀章愛知県知事や河村ひろし名古屋市長が挨拶。いつもは「下品な挨拶」を自称される河村市長は世界大会だけに英語で挨拶。「I love you」を連発された。次いで塾長が開会の挨拶、これも第一回以来英語である。

初日は大人の二回戦までと、細かく年齢・体重・ルールが設定された少年部。15歳以下は顔面パンチがなく、つかみありなので組んでは道衣を握って振り回し、足払いでこかす試合が続出。これは以前からこのルールで稽古を積んでいる日本人有利だ。大人の部も身体指数(身長cm+体重kg)で250以下の部の藤田のみ敗退、あとの日本人は順調に勝って二日目にまわる。ロシア勢は身体全体を使って殴るので、KOが頻出する。

二日目。少年部から決勝が始まる。小川英樹・四日市支部長が、少年部10人ほどを従えて、仮面ライダー・ショーのような演舞を見せてくれた。

演武の前半は子どもたちをなぎ倒すが、後半は小川支部長が子どもたちに制圧されるというストーリー。その小川支部長の四日市支部からは3人が少年部で世界王座に就いた。襟をつかんで振り回しハイキックを当てて足払いなど、豪腕のロシア勢も顔面なしではなすすべなし。襟をつかんでのミドル連打で腹にきかせるなど、珍しい光景も。

ところが一発でも顔面パンチありの高学年になると、事態は一変する。少年部では各学年で毎年全日本タイトルをとり続け、前回の世界大会でも王座に就いた酒井優太も完敗。

ロシア人選手はジリジリと距離を詰め、相撲の立ち会いのように「ヨーイドン」で相手と同時にパンチを打ってくる。相打ちで暴風のように左右フックを振り回し、スピードとパワーでなぎ倒す。下がると場外まで吹っ飛ばしてしまう。日本人が繊細に距離を取ることが可能なのか、誰がどうやってそれを成し遂げるのか、注目された。女子重量級の大谷美結が警察に就職、欠場。

女子は準決勝までで日本人は敗退した。軽いクラス(-220)はともにロシアのアナスタシア・モシキナと クリスチナ・サンドルキナの決勝。クリスチナはロシアでも空道のタイトルを総なめにしてきた選手。アナスタシアは前回のジュニア世界準優勝から今回は成人の部に上がってきた。延長で若いアナスタシアがワンツーで突進し金星。

重いクラス(+220)はやはりともにロシアのクリスチナ・スチェパニャンとアレクサンドラ・サビチエバ。アレクサンドラは全露ジュニア大会優勝6回、2014年世界ジュニアでも優勝、20歳になってテレビで特集番組が組まれるほどのルックスで人気者。クリスチナが腰を低くしてパンチ、蹴りを出し、首を抱き込んでの払い腰を繰り出す。延長4-1でクリスチナの勝ち。

男子-230は優勝候補がロシアの若手、ミロシニコフ。日本人としてはハイや後ろ回しけり、トリッキーな技でスター性抜群の目黒雄太が2回戦で当たった。ミロシニコフの圧力に目黒が下がる。しかし手を下げながら距離を取り、ハイ・ハイの連打。それをミロシニコフがフックで追いかけるという展開に。目黒はフックが当たらない距離に自信があるのか、何かを狙っているように見えたが、寝技になった展開でミロシニコフがすかさず極めを入れ効果を取る。焦った目黒はパンチも仕掛けて必死で追いかけるも本戦効果負けとなった。「ロシア、ロシア!」と会場は大声援。ミロシニコフは次の試合でも谷井翔太を破って決勝進出。

前回日本勢では唯一中村知大が優勝したが、ロシアのスーパースター、2005年&2009年優勝のコリャン・エドガーが準決勝で負傷し、決勝は棄権。ともに引退かと思われたが、今回に雌雄を決しようと出場、その2人が準決勝で激突した。エドガーはここまで、左構えからの左フックと同時に右手で相手のズボンをつかみ、空中に持ち上げたたき落とすという荒技で新鋭の菊地逸斗を破っている。中村に対してもフックにタックルを合わせて持ち上げ叩き付ける。しかし中村も下から抱きついてキメを入れさせない。

中村は左右に細かいステップを踏み、飛び膝!エドガーはこれも空中で抱え、抱え上げてたたきつける。このまま延長へ。エドガーは次第に中村の細かいステップを嫌がるそぶり。さすがに力業連発で疲れたか。中村は自分からステップインして左ストレートから一気に組む。これだとエドガーの相打ち狙いをかわせる。中村優勢のまま判定へ。2-2だが主審は中村を取った。

決勝は唯一の日露対決となったが、前戦で体力を使い果たした中村が、延長になると息切れ。ミロシニコフの初戴冠となった。

-240クラスは前回2014年世界大会優勝のゲガム・マナヴァシアン(ロシア)が軸。準決勝で田中洋輔と当たる。田中は寝業師で、右ロングフックから後ろ帯を取り、前にこかして寝技で上になる技術が完成の域にあるが、さすがにマナバシアンは投げさせない。相四つから捨て身で投げるもマナバシアンが背後に回り、寝業師の田中から裸締めで一本勝ち。続いて首相撲勝負の服部晶洸もなんなく下す。

一方の山はMMA大会「M-1グローバル」で闘うプロファイターであり、MMAとキックボクシング双方で強豪であるジョージアのラウリ・ツタラウリが、そり投げやバックからの十字を駆使して勝ち上がり、前回準優勝のロシアのアンドレ・グリシンをも膝十字で撃破。グリシンはうずくまって立ち上がれなくなる威力だった。

決勝はマナバシアンとツタワウリの顔合わせ。本戦は互角だったが、延長ですぐにツタラウリの動きが止まり、セコンドが棄権を申し出る。脚を痛めたようだ。プロMMA18勝というツタラウリもこのルールでマナバシアンの連覇を防げなかった。マナバシアンは国旗を拡げて場内を駈け抜けた。

-250は山崎順也が自分の距離で闘い順調な滑り出し。しかしロシアのロマン・クリエフに細かく距離詰められ、押されて倒される。パンチはあまり効いたようにも見えなかったが、効果を奪われてしまう。ここで敗退。クリエフが決勝へ。

一方の山は昨年ワールドカップ優勝、ロシアのイゴリ・ペルミンがダウンを次々に奪い豪快に勝ち上がる。加藤智亮には右ストレートの相打ちでぐらつかせ、連打で効果2を奪って勝ち。このまま決勝でペルミンがクリエフを押し切り、優勝。

その後、表彰式で不思議な出来事が生じた。ウラジオストック支部長でロシアの最有力者であるアナスキン氏がマイクを持って喋り始め、準優勝のクリエフを呼び出す。「クリエフは残念ながら勝てませんでしたが、応援に来てくれた彼女にこの場でプロポーズしたいと申しております」。この話はまったく誰も聞いておらず、彼女も登場して、求婚を受け入れたのだった。

-260クラスは、世界選手権とワールドカップで連覇、プロMMAの大会“League S-70”で6戦6勝、UFCとも契約した(2014年に試合が組まれたが負傷により実現せず)アダム・カリエフが軸。対抗馬は清水亮汰。

清水は蹴りを駆使、とにかくパンチの位置に頭を置かない。組んでは膝、ニーオンザベリーで効果を取って手堅く勝ち進む。山はロシアのイワン・シュペッド戦。清水はハイとミドルで試合を組み立て、組みからは頭突き。パンチの打ち合いに持ち込ませない。延長でシュペッドのスタミナが切れ、清水が蹴りで押すシーンが目立つ。4-1で判定勝ち、決勝進出。

一方の山組では打撃の加藤和徳が裸絞めで勝って調子に乗り、カリエフと激突。豪快に相手を吹っ飛ばすカリエフの後ろ回しは左に回ってすかし、遠くに届かすミドルで脇を狙い打ち。これで顔面パンチを防ぎ、寝技でも反転して上に。カリエフはスタミナ切れか動きに精彩がなくなり、研究を生かした加藤が文句なしの5-0で金星を挙げた。

こうして決勝は清水vs加藤。蹴りの上手い同士で静かに試合は進み、清水が首をとらえて膝を連打するシーンが印象深くそのまま優勝。喜びを爆発させた。

-270はともにロシアのコンスタンティン・カラウニクが、空道ワールドカップで日本代表の加藤久輝に勝利しているアンドレイ・チェルニックに勝って優勝。

+270は走りながら右アッパーで失神KO、ハイ一発失神KOとものすごい勝ち上がりをしてきたセルゲイ・ミナコフと岩崎大河が激突。岩崎は緒戦を快勝して調子に乗る。大きなミナコフが圧力をかけるが岩崎はインローを蹴っては下がる。次第にミナコフはインローを嫌がり始め、出足がなくなる。ここで岩崎がアウトローを蹴るとパンチを合わせられたため再びインローに切り替え。互いに組んで正面からのフックの打ち合いに場内がどよめき、次いで大歓声。

延長ではフックの打ち合いに「ロシア、ロシア」「ニッポン、ニッポン」で大騒ぎ。判定となり、私は岩崎の完勝と見たが1-4の判定負け。この日もっとも残念な結果だった。決勝は、サンボ選手でもあり野村幸汰を破ったマラット・アリアスハボフがミナコフを押し切って優勝。そのまま泣き崩れ、控え室でも号泣。

大会MVPは連覇のマナバシアン。今回も日本勢の優勝は1階級のみだが、しかし蹴りを中心にして、一発殴ってすぐ組むもという戦略でロシアとは互角に戦えた。この戦法はかなり有力と思えた。

終了後は打上げ。殴り合い倒し合った各国選手が入り乱れ、大声で歌って喜びを分かち合った。

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